不眠症(1)

 〝不眠症〟は本人や周囲が発症の心理的からくりを知らず、また医療も心理より薬で解決しようと逆に増産に加担している代表です。不眠症は疾患というより癖ですから、疾患とはここで記しません。

 ところでなぜ不眠症になるのでしょう。

 不眠症はそもそも人間以外の生き物にはない現象です。したがって不眠症の対策を講じたり、不眠症を意識したりすること自体に問題がなきにしもあらずなのです。

 根本対策は眠ろうとする人間だけがとらわれる心の束縛から自らを解放することです。具体的には不眠にとらわれることのない野生動物の生態が何にも優る教えと達観することです。とは言え、達観しようとそれ自体がとらわれとなっては元も子もありませんのでひとつの哲学とご理解ください。

 医学的には交感神経と副交感神経のバランス全体を副交感神経優位に少しシフトするのがよいでしょうが、これを薬で行なうのは簡単ですが、薬で行なってしまうと依存的になって薬と縁が切れなくなるのが問題です。

 そこで坐禅、ヨガ、自律訓練法、瞑想法などの実践で副交感神経優位に少しシフトするのがよいのです。

 不眠で悩んでいるかたは10人に1人以上と言われています。

 俯瞰すれば、不眠症はどのような経緯で不眠症になったかで対処も当然違います。原因がはっきりしているなら先ずはその原因の対処が優先です。ところが実際は原因が明確でない場合が多いのです。このようなかたには身心のコンディション変化(バイオウェーブ)が起こる生命の仕組みを説明するように当方はしています。

 特に生命の仕組みから回復期が近いことを知ると薬に依存することを軽減できると思います。「人間は不眠では死なない、生命が睡眠をどうしても必要とするようになったら自然に眠るようになる」という哲学をもつことができたら不眠に悩まされることは少なくなると思いますが、現在、不眠症に陥っているかたにはちょっと無理な哲学でしょう。それよりも就寝時に眠らないような行為を自己に課すことが逆に眠りに入る結果になって効果をあげることもあります(いわゆる逆療法)。

 いまここで眠っておかないと明日に差し支えるなど眠るのに意識を集中することで不眠を誘発する場合が多いのです。したがって眠ることに集中しない、あるいは眠らなくても平気、就寝時に眠らないような行為を自己に課すなどが逆に眠りに入る結果を生みます。

 眠ろうとする努力は1ヶ月や1年先ではなく、ただちに結果が出ます。しかも結果は努力がうまく行った時は眠って意識できないのに対し、うまく行かない時のみ眠れずに意識して焦る、これが不眠症の心理的からくりです。

 だから眠ろうとする努力は禁物です。しかし長年、眠ろうと多大な努力をしてきた不眠症のひとが、いままで努力してきたことをきょうからすべて止めるのは大きな不安でしょうから、少しずつで良いのです。薬は量を少しずつ減らし、急に止める必要はありません。

 眠れないことで医療や薬に助けを求める社会風潮や既成概念が悪循環となって不眠症を本格化させているのです。

 とにかく眠る努力を止めることが不眠症の一番の特効薬です。

 

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