四つの生命維持経路

西洋医学では自律神経系、内分泌系、免疫系の三つが生命を維持する系としてよく知られています。またこれらの系は自律神経、血管、リンパ管の三つの経路を通じて中枢(脳・脳下垂体)と末梢(内臓・器官・組織など)を結び制御していることもよく知られています。

自律神経は心臓や胃腸の動き、発汗などを即効的に制御しています。血管は血液(赤血球・白血球・血小板等)の経路であり、内分泌液であるホルモンは血液を介して全身を巡っています。内分泌系の制御は自律神経系に比べるとやや遅効的です。

免疫系は白血球中の免疫が血管やリンパ管を通じ全身に巡っています。免疫は細菌やウイルスなどの異物を排除するのが本来の働きですが、時には自己を異物と見なして攻撃する自己免疫疾患が難病として知られています。

ところで以上の三つの系や経路では不完全なのです。

前ページの中枢末梢非同調症候群は第四の経路があり成り立っている現象です。東洋医学(漢方医学)では病気や不調は体内の気・血・水のバランスの乱れで起こるとされ、特に注目すべきは「気」です。気は確かに存在するが目には見えない空気、電気、磁気などの気です。

つまり体内には電気を主とする気の通り道が第四の経路として存在するのです。これを東洋医学では〝経絡(けいらく)〟と言っています。経絡は鍼灸における気の通り道でもあります。また中枢末梢非同調症候群で言う中枢と末梢の同調・非同調も経絡を流れる気を通じてのものです。

それだけではありません。受精すると当初、細胞は一個から二個、四個、八個と倍々に分裂して増えますが、間もなく個性化が現れ始めます。個々の細胞は同一の遺伝子を設計図としながらも全体の中の自己の位置するところにふさわしく、分裂を続けたり止めたりします。こうして遺伝子の設計図に合わせて個体が形成され胎児となり赤子となって誕生し、いまの我々があるわけです。

個体が形成される際、同一の遺伝子をもつ個々の細胞が全体中の自己の位置を認識し自己の役割を演じるのが可能なのも経絡を通じた気の流れがあるからなのです。経絡を通じた気の流れは当然、個体を形成したらそれで終わりではありません。いまも我々生命は経絡を通じた気で中枢と末梢が同調しているのをはじめ、重要な生命活動(波動的活動)が行なわれているのです。しかし西洋医学の視野にあるのは粒子的活動のみです。生命を維持する第四の経路である〝経絡〟が視野にある東洋医学では波動的活動はまったくの異端ではないでしょうが、西洋医学ではいまのところまったくの異端です。これはそもそも西洋医学が主流である医(医学・医療)に巨大な盲点がある表れなのです。

人間の脳と掌が生命場(せいめいば)として相似性が高いのも発達した神経だけでは説明がつきません。経絡が深く関係しているのです。脳が第一の極なら第二、第三の極があります。南極と北極が磁性は逆ですが似ているように極は似た性質をもつ特性があります。では脳を第一の極とすると第二、第三の極はどこなのか。

構造的には足底が第二、掌が第三の極ですが、機能的には掌が第二、足底が第三の極と言えます。足底は全身の体重がかかり、掌ほどの自由度がないため、機能的つまり生命場としては掌のほうが脳と密接です。脳と掌が生命場として相似的なのは四つの生命維持経路のうち、経絡によるところが大きいのです。

神経、血管、リンパ管がつくられる以前、すなわち受精時から機能している最も基本的な生命維持経路が経絡けいらくです。しかしこの経絡が西洋医学の視点にないのは大いに問題なのです。とりわけ中枢末梢非同調症候群をはじめ難病の発症するメカニズムがなかなか解明できないのも第四の経路である〝経絡〟が見落とされていることが大きいのです。

 なお生命活動の二重性を波動的活動および粒子的活動と表現しましたが別名、波動的活動は秩序的活動、粒子的活動は調和的活動と言い換えることができます。

 

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