生存の本質は〝なぞる命〟

なぞる命と健康長寿」や「見過ごされている影の主役」のページで体内地動健康学を別の角度からご紹介しました。そのキーワードのひとつが〝なぞる命〟です。

個体発生は系統発生を繰り返すなど〝なぞる命〟の考えはこれまでも医科学に暗にありました。しかし個体形成後の〝なぞる命〟は医科学の考えにこれまでまったくありませんでした。

〝なぞる命〟は個体形成後も続いていることを示したのが体内地動(体内地動説)です。

つまり進化はもとより、個体発生が系統発生を繰り返すことも〝なぞる〟性質に基づいていることから、生存の本質が〝なぞる命〟であることはこれまでの医科学の見解でも明らかです。

しかしながら個体発生後、つまり誕生後は呼吸や心拍、代謝等の表面的な活動に医科学は目を奪われ、誕生後も生存の本質が〝なぞる命〟であることを見過ごしてきました。

医科学のこの見過ごしが疾患の予防開発を立ち遅らせる大きな要因になってきたのです。

医科学を代表する医学は「生体の構造・機能および疾病を研究し、疾病の診断・治療・予防の方法を開発する学問」と定義されています。

ところが予防の方法は十分に開発されてこず、ガンや心疾患や脳血管疾患をはじめとする疾患が蔓延していることはご存じの通りです。殊に超高齢社会に入り増大している認知症の多くは発症の原因も不明で予防の方法も確立していません(当方では時間認識をはじめ生命の根本的メカニズム(体内地動)に基づく予防の方法を提示しています)。

医学を基礎とする医療はサービス業ですから治療が中心、予防はワクチン接種のような経済性の見込まれる以外普及しないのはやむを得ません。しかし医学には予防の方法を開発する使命があります。

ところが医学から享受できる知恵や情報は医師の治療や医療従事者に偏向し、一般の人々が疾患を予防するのに十分役立ってきませんでした。

〝なぞる命〟のうち影の主役に回った秩序の活動部分が見過ごされている影響は超高齢社会でますます大きくなっています。

「秩序と調和」は宇宙のキーワードであるのみならず、生命のキーワードでもあります。と同時にこのキーワードは二重性を表してもいます。小宇宙と言われるようになって久しい生命ですが、これまでは空間的に小さいことから主に称され、時間の本質やメカニズムまで見据えた小宇宙ではありませんでした。しかし当方の発見により生命も時間と空間が一体化した時空として名実ともに小宇宙であることが明らかになりました。

人間社会の秩序は必ずしも時間と密接不離というわけではありませんが、宇宙や生命など自然界の秩序は時間と密接不離です。

〝なぞる命〟が秩序の活動として生存の本質であるにもかかわらず、これまで光の当たっているのはもっぱら心拍や呼吸や代謝等、身体内外のその時々の環境変化に対して恒常性(ホメオスタシス)を保つ調和の活動です。

つまりこれまでの常識は生存の本質から見ると本末転倒なのです。

もちろん調和の活動も生存に重要であり不可欠です。しかし生存の本質はあくまでも秩序の活動である〝なぞる命〟であり、健康はこの生存の上に成り立っています。

点としての調和の活動が続いて線になっているように思われがちなのですが、もともと線としての秩序の活動があり、その上に点としての調和の活動が乗っかっているのです。これを二重性と言います。このような二重性が一般に知られていないのです。このうち線としての秩序の活動が〝なぞる命〟です。

生命の時間の連続性は〝なぞる命〟によって保たれており、生命の時間の連続性が途切れたら我々はいっときも生きていることはできません。その意味で〝なぞる命〟は疾患の予防に見逃せません。

我々が健康で生きるためには「生存の本質は〝なぞる命〟」であるという視点つまり体内地動を踏まえた生命観が極めて重要なのです。

 

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